遥か大正時代に自然を多分に取り入れた都市の構想が掲げられて開発されて今の田園調布となったと知り、このような自然と人類の共存を古くから掲げられている土地という特徴を生かしながら、しかし実際の自然ではなく、人々の記憶やイメージの中の「緑、木」という自然を使用して成立する作品を提示したいと考えた。

 土地を開発して新たな建築物や道路を創造する時に、木は切り倒され、地面はアスファルト等に覆われていき、経済の発展が著しい都市では、環境や文化の面との相互作用がうまく働かず、自然は記憶の中に押し込められ無機質なものに蓋をされて忘れ去られてしまう。しかし、人々の記憶やイメージの中の「緑」はこちらが問い掛ければ無限に広がりを持ち始めていく。また、設置場所となる「ステージファースト田園調布アジールコート」は、外壁のアースカラー、アクセントのファサードデザインから、まるで地上から浮き出た地層のように見受けられたため、「地面、地層、緑、木」をテーマに建物の内部にポータブルな緑の場を作ることを提案する。

緑の地面を地層ごと折り紙のように折りたたみ、そこから一本の木が垣間見ることができるオブジェの設置。一本の木は黒檀、紫檀、メープル、ナラ、サクラ、等様々な色や模様の木をつなぎ合わせていき、その中に、田園調布周辺に生息する木(街路樹のエンジュ)や、昔生息していた木(サクラ)などのリサーチから浮かび上がった木も入れて一本にしていく。

 エントランスを通過する住人や来客の方々が持つ「木」や「緑」に対する記憶やイメージは様々。それらの見る人の様々な記憶やイメージを使い成立するオブジェの制作と設置を考える。


 

その木が生える場所


アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション2005

最優秀賞受賞 (買い上げ設置)

主催:アーバネット コーポレーション

設置場所:ステージアールジーコート/田園調布

その木が生える場所

2005年

480×765×1525mm

木、塗料、真鍮